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人生朝露

人生朝露

ジョゼフ・キャンベルと黄金の華の秘密。

ジョゼフ・キャンベル(Joseph Campbell  1904~1987)。
今日はジョゼフ・キャンベル(Joseph Campbell  1904~1987)について、もう少し。角川で『時を越える神話』『生きるよすがとしての神話』『野に雁の飛ぶとき』という講義録があるんですが、このうちの『時を越える神話』から。

『時を越える神話』ジョゼフ・キャンベル著 角川書店。
≪ブッダは地上に座っている。それは瞑想によって、自分の意識と仏性(あらゆる生物に宿っている超絶的な意識)とが合一であることを意味しています。
 鈴木大拙(一八七〇 ― 一九六六)の著述のなかに、すばらしい話がありました。ある若い学僧が老師に向かって、「私にも仏性というものがございましょうか」と質問したところ、老師が「ないな」と答える。学僧は、「でも万物には仏性が宿っていると教えられました。石にも、木にも、蝶にも、蜂にも、鳥にも、けものにも。ありとあらゆる生き物に」と言う。そこで老師のいわく――「さよう、お前の言うとおり。万物には仏性が宿っておる。石にも木にも、蝶にも蜂にも、鳥にもけものにも。生きとし生けるものに。だがお前にはない」。「私にはない?いったいどうして?」「おまえがそんな問いを発するからだ。」(ジョゼフ・キャンベル著『時を越える神話(Transformations of Myth Through Time)』より 第六章 仏教-正覚への道≫ 

・・・これは、『無門関』の趙州狗子という代表的な公案から。仏性を説明している部分です。

『一 趙州狗子
趙州和尚、因僧問、狗子還有佛性也無。州云、無。』(『無門関』 一 趙州狗子)
→ある僧が趙州和尚に「狗子にも佛性があるのでしょうか、無いのでしょうか?」と質問した。州は言った。「無」。

参照:Wikipedia 仏性
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BB%8F%E6%80%A7

ジョゼフ・キャンベルは、C・Gユングの影響が非常に大きいので、鈴木大拙の名も当然のごとく出てきます。

参照:ユングと鈴木大拙。
http://plaza.rakuten.co.jp/poetarin/5095/

『時を越える神話』ジョゼフ・キャンベル著 角川書店。
≪短い紹介を終わって、私たちも始めてみましょう。最初は瞑想です。これ(図七-1)は楽な姿勢と考えられています。背筋をまっすぐにして座らなければなりません。人間の体と宇宙の体は対等だと考えられていますから、私たちの背骨は世界の中軸ともいうべきものです。そこで私たちは世界の中軸に、中心点に、不動地に達した。そしていま瞑想に入っているのです。
 人はまず呼吸のコントロールから始めます。(中略)その基礎に、感情、情緒、そして精神状態はみな呼吸に関係しているという考えがあります。あなたが休んでいるときには、呼吸は平穏なよい状態に保たれている。なにかのショックで心が動かされると、呼吸が乱れる。情念に駆られても呼吸は乱れる。逆に、呼吸を変えれば精神状態も変わる。ゆっくりと呼吸することによって、池のさざ波を静めようとするわけです。座禅僧たちの一呼吸の長さときたら驚くべきものです。修行を積んだヨーガ行者は大変な肺活量の持ち主です。
 こうして私たちは波を静める。水面が静まると、分断されていたもののイメージが現れ、私たちに見えてくる。そこが肝心な点です。ここに粗野な外面的肉体があり、その手は霊妙体の象徴を支え持っています(図七-2)。この粗野な集塊(人間の体)と霊妙体とを混同してはなりません。そんなことをしたら、あなたは精神異常者となり、自分が「それ」だと信じ込んでしまします。私たちは両者を区別しなければなりません。(同上 第七章 クンダリーニ・ヨーガ(その一)--東洋人の意識と神概念)≫

上記文章の下線部分を合わせて読むと、『スターウォーズ』でのヨーダのセリフに非常によく似てきます。
ヨーダとルーク。
Yoda:“For my ally is the Force, and a powerful ally it is. Life creates it, makes it grow. Its energy surrounds us, and binds us. Luminous being are we, not this crude matter. You must feel the Force around you. Here, between you, me,the tree...the rock...everywhere.!!Yes...even between the land and the ship.”
→ 私にはフォースという心強い味方がついておる。生命がそれを生み出し、育む。その偉大なる力は我々の周囲に満ち満ちて我々を結びつけておる。ワシらは光の存在なのじゃ、粗野な肉の塊の話ではないぞ。お主は、お主を取り巻くフォースを感じねばならぬ。ここにも、ワシとお主の間にも・・あの木々にも、岩にも・・そう、あらゆる場所にな!そして、この大地とあの戦闘機との間にも。

参照:マスター・ヨーダと老荘思想 その1。
http://plaza.rakuten.co.jp/poetarin/5025/
『スターウォーズ』の「フォース(Force)」は、「道(tao)」か「氣(qi)」が最も親和性の高い言葉でしょうが、こう見るだけでも、ユング→ジョゼフ・キャンベル→ジョージ・ルーカスという思想の潮流がよく分かるのではないかと思います。

太乙金華宗旨 その1。 太乙金華宗旨 その2。
上記講義録において、ジョゼフ・キャンベルが「図」として例示していたのはこれです。リヒャルト・ヴィルヘルムとユングの共著『黄金の華の秘密』の挿絵。本来は道教経典で、『太乙金華宗旨』といいます。

参照:『黄金の華の秘密』と『夜船閑話』。
http://plaza.rakuten.co.jp/poetarin/5146/

太乙金華宗旨 その1。
『凡人以意生身、身不止七尺者為身也。蓋身中有魄焉、魄附識而用、識依魄而生。魄陰也、識之體也、識不斷、則生生世世、魄之變形易質無已也。惟有魂、神之所藏也。魂晝寓於目、夜舍於肝、寓目而視、舍肝而夢、夢者神游也、九天九地、剎那歷遍。覺則冥冥焉、淵淵焉、拘於形也、即拘於魄也。故回光所以煉魂、即所以保神、即所以制魄、即所以斷識。古人出世法、煉盡陰滓、以返純乾、不過消魄全魂耳。』(『太乙金華宗旨』第二章 元神、識神)
→凡そ人の身体は意を以って生じ、身体は七尺の存在にとどまらないものである。というのも、身体には「魄(はく)」があり、魄は識に従い、識もまた魄によって生じる。魄は陰であり、識が実体化したのもである。識が断たれないうちは、次々と世を経て生まれ続ける。魄はその姿形を絶えず変えてやむことがない。ただ、「魂(こん)」もまたあり、その内に精神を宿している。魂は日中には眼の中に隠れ、夜は肝臓の中に巣くう。眼の中にいるうちは魂も外界を見ており、肝臓にいるときは魂も夢を見る。夢とは精神の漂泊であり、九天九地を巡る旅も、刹那のうちにこれを夢見る。目が覚めている間でも、鬱屈してふさぎ込んでいるような者は、その形(身体)に拘っているのである。すなわち「魄(はく)」に捕らわれているのだ。故に回光とは魂を収斂する行いであり、精神を保ち魄を制し、識そのものからも解き放たれるのだ。古の人がこの世界から去る場合には、陰の滓(かす)を昇華して、純然たる陽へと還る技法であり、魄を消して魂のみの存在になることに他ならない。

魂魄。
≪(1)「魂」Hun これは「陽」の原理に属する者であるから、私はこれをアニムスと訳した。(2)「魄」Po これは、「陰」の原理に属し、アニマと訳される。この両者はもともと、死の過程についての観察からきた表象である。したがって、両者はもともとデモン、すなわち死者(鬼)を示す共通の字形を含んでいる。(中略)アニムスは両眼の中に住み、アニマは下腹部に住む。アニムスは明るくて活動的であり、アニマは暗くて大地に結びつけられている。「魂」、アニムスに対応する文字は「鬼」と「雲」を示す文字から構成されており、「魄」、アニマに対応する文字は「鬼」と「白」からつくられている。「魄」についてのこのような概念には、中国以外のどこか他の場所でも、例えば影のたましいとか肉体のたましいというような形で、類似したとらえ方が見出せると思われる。(以上『黄金の華の秘密』ヴィルヘルムの解説 湯浅泰雄・定方昭夫訳より))≫

参照:太陽と月、男と女の錬金術。
http://plaza.rakuten.co.jp/poetarin/5148/

オビ=ワンのローブとライトセイバー。
この『黄金の華の秘密』に見られる、道教の「魂魄」と「陰陽」の思想は、身体が消失したり、光に似た性質のまま生者を見守ったりするジェダイの死後のあり方を、ほぼそのまま説明できます。

参照:尸解の世界。
http://plaza.rakuten.co.jp/poetarin/005197/

太乙金華宗旨 その2。
『又不可墮於蘊界、所謂蘊界者、乃五陰魔用事。如一般入定、而稿木死灰之意多、大地陽春之意少。此則落於陰界、其氣冷、其息沉、且有許多寒衰景象、久之便墮木石。又不可隨於萬緣、如一入靜、而無端眾緒忽至、欲卻之不能、隨之反覺順適、此名主為奴役、久之落於色欲界。』(『太乙金華宗旨』 第五章 回光差謬)
→また蘊界(うんかい)に堕ちてはならない。いわゆる蘊界とは、五陰魔の事を用いられる世界である。精神が定まったとき、木が枯れたり、冷めた灰になったような生気のない感覚となることが多く、春の大地に日が落ちるような感覚になることが少ない。そうすると、陰の世界に落ちやすい時期でもある。その氣は冷たく、その息は重苦しい。さらには数多の「寒」「衰」の景色が見え、木石のような感覚に捕らわれる。同時に外界の世界のしがらみに縛られてもならない。一度心に静かになったと思った矢先に、ありとららゆる妄想がとめどなく吹き出してしまい、どうにもならない状態に陥る場合がある。この場合には、無理に止めずに流れるに任せた方が落ち着きやすい。主客が逆転した状態が長く続くと色欲界に落ちることになる。

参照:Evil Cave - Empire Strikes Back [1080p HD]
https://www.youtube.com/watch?v=iwhx2gZ5fBE
もちろん、ダークサイドも。

今日はこの辺で。


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